スナメリについて

スナメリは小さなクジラの仲間です。ネズミイルカ科というグループに属していますので、イルカと言うこともできます。で、クジラなのかイルカなのかと言われれば、どっちでもあるけど、どっちでもないのです。

世界には約90種弱のクジラの仲間(鯨目)がいます。その中で歯があるものをハクジラ類と呼びます。歯がないクジラ(ハクジラの仲間にもメスには歯が生えないものがいますが、種類として歯が全くないものはいません)は、ヒゲクジラ類といい、歯の替わりにヒゲ板というわれわれの爪と同じ材質で出来た硬い板を口の中に持っています。ヒゲクジラはすべて大きな動物で日本語ではなになに「くじら」です。イルカとクジラの違いは大きさだけとよく教科書的な本に書いてありますが、じゃあヒゲクジラが小さかったら「いるか」と呼ぶかと言われると、たぶん呼ばないでしょう。日本語で言う「いるか」は、くちばしと背びれがあって、ピュンピュン飛びながら泳いで行くのをよく見るあの動物です。スナメリは生物学的にはクジラでネズミイルカの仲間ですが、くちばしも背びれもありません、泳ぐときも水面に背中をちょっとしか見せず、ビュンビュン飛んだりしません。だから彼らは日本語のなになに「いるか」ではなく、あくまで「すなめり」で、地方によっては「なめのうお」であったり、「でごんどう」であったり、「すざめ」であったりするのです。

生き物にそれ独自の名前があること、そして地方によって呼び名が違うということは、その生き物がそれだけそれぞれの地方で身近なものだったということの現れです。そう、スナメリは、日本で最も人の身近にすむクジラなのです。

スナメリが身近なクジラだと言っても、どこの海にでもいる訳ではありません。彼らのすめる場所は決まっているのです。まず、あまり寒いところにはいません。もともと彼らは南の海の生き物です。ペルシャ湾からインドの沿岸、東南アジアの沿岸、中国、韓国、そして日本という分布域を考えればよくわかるでしょう。日本は、彼らが生息する場所としては最も北にあたります。それでも太平洋側では、東北の仙台湾まで生息場所を広げています。そして、理由は分かりませんが、遠浅で海底が砂や泥で岩でないところにしかすみません。そういう場所が広く拡がっているところ、日本では、有明海、長崎県の大村湾、響灘から瀬戸内海、伊勢湾と三河湾、東京湾、そして九十九里浜から仙台湾だけに生息しています。そして、形態や遺伝子の研究から、上のそれぞれの海域の間では、スナメリの行き来はほとんどないと考えられています。つまり、一つの海域で数が減ってしまったら他からやってきて、数が保たれるということはないということです。

スナメリは、身近な海にいるだけに、人間活動の影響をとても受けやすい生き物です。そして、実際に数の減少が心配されています。瀬戸内海では、牛窓前島も含む中東部でこの20年少しの間に、約1/10にまで減ってしまったと考えられています。その直接の理由は分かりませんが、埋め立てや海砂の採取で生息場所がなくなったこと、刺網等の漁業による混獲、農薬やダイオキシンなどの有害化学物質による汚染等が考えられています。そんな中で牛窓前島はまだ比較的スナメリがよく見られるところです。おそらく昔の環境が比較的保たれているのでしょう。

スナメリはエビなどの底生の甲殻類から、コノシロ、イカナゴ、カタクチイワシなどの群集性の魚、イカまでさまざまな餌を食べています。九州での研究結果では、若いときは底生のものをよく食べ、オトナになると泳ぎ回る魚を多く食べるようになるとも報告されています。スナメリの生息にはさまざまな魚がいることも必要なのです。

スナメリの形で他のイルカと最も違うのは、背びれがないことでしょう。そのかわり背中の真ん中には一本の隆起があって、その上に小さく硬いぼつぼつがたくさんあります。似たぼつぼつ状のものは他のネズミイルカの仲間の背びれにもありますが、これが何のためのものだかよく分かっていません。お互いここで体をこすりあうためのものだとか、感覚器だとかいう説があります。また、スナメリが含まれるネズミイルカの仲間は、イルカのようなとんがった「くちばし」がありません。口の中の歯にも特徴があり、イルカのような円錐形ではなく、上が平たく広がったしゃもじのような形をしています。

スナメリは、前に述べたように、普通イルカのように活発にジャンプしたりしません。大きな群れを作ることも稀ですし、船に近寄ってくることもあまりありません。静かに背中をちょっとだけ出して、一瞬息継ぎをして潜って行きます。そして潜ると次ぎにどこに出て来るか、見定めるのが難しいです。ですから、水面上から見る限りスナメリはシャイで物静かな動物のように思えるかもしれません。しかし、水族館の大水槽でスナメリをご覧になった方はご存知のように、彼らは水中では実にしなやかに優雅に休みなく泳ぎ回ります。実はスナメリはとても活発な動物なのです。

監修 天野雅男 長崎大学水産学部教授

スナメリ/砂滑/Neophocaena phocaenoides
分類クジラ目/ハクジラ亜目/ネズミイルカ科
体長140~180cm/成体 70~80cm/出生時
体重40~70kg
寿命20年以上30年ほどまでと推定されている。(23歳という野生個体発見の記録があり、飼育されている個体で、35歳という例もある)
食性スナメリはエビなどの底生の甲殻類から、コノシロ、イカナゴ、カタクチイワシなどの群集性の魚、イカまでさまざまな餌を食べています。 九州での研究結果では、若いときは底生のものをよく食べ、オトナになると泳ぎ回る魚を多く食べるようになるとも報告されています。
スナメリの生息にはさまざまな魚がいることも必要です。
群れ構成の特徴通常は1~3頭の小さな群れで泳いでいるが、餌を追い一時的に十数頭の群れをつくることもある。

特徴

世界におけるスナメリの分布

スナメリはインド洋から太平洋に分布する沿岸性の種とされています。西端はペルシャ湾で東端の日本までの沿岸域に生息していて、北限が日本の仙台湾とされています。

分布図

日本におけるスナメリの分布

形態や遺伝子の研究から、下のそれぞれの海域の間では、スナメリの行き来はほとんどないと考えられ、それぞれの分布域のスナメリは別の系群とされています。 一つの海域で数が減ってしまったら他からやってきて、数が保たれるということはないということが指摘されています。

分布図

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